社長の役割、仕事とは【まとめてみた】
こんにちは。“小心者のぼく”です。
全国的に見ると承継者不足で廃業の危機に瀕している高齢経営者の中小・零細企業は65%にも上ると言われています。
高齢経営者のリスクは死です。突然亡くなり、他社で働いていた息子・娘にいきなり白羽の矢が立ったり、社内の部長や副社長に承継してもらうケースも多いです。最近では学生や若者と承継者に困っている高齢経営者をマッチングするようなサービスも出てきているようです。
これらの承継に共通するのは、経営を勉強するための「社長との伴走期間が無い」ということです。いきなり社長として会社を経営しろと言われるのですから大変ですよね。
そこで今回の記事では、
・普段どんな仕事をしているのか
をお伝えしようと思います。
正直社長の仕事に正解はありません。私自身の経験、私の周りの経営やの話などをまとめてみました。正解があるとすれば、会社が存続するために行うための事が全部社長の仕事です。
この記事を通じて、社長として何を考え、どんなことをしなければならないのかがわかると思います。自信をもって社長業に専念していただけますと幸いです。
▼結論
- 仕事を取ってくる
- 業務を作る
- 資金を調達する
- KPIを管理する
- 人を採用、配置する
- 人を育てる
- 報連相を受ける
- 指揮命令系統を作る
- 現場を見る
- 現場業務を理解する
▼社長業の前提
前提として、社長業に決まった仕事はありません。会社の規模や業種、地域によって仕事内容は違いますし、最悪仕事をしていなくても良いのです。
(非上場で過半数以上株を取得している)社長の本質的な役割とは「社長自身が成し遂げたい未来を実現するために、ヒト・モノ・カネを集めて社長の代わりに動いてもらう」ことです。この定義に従えば、「従業員の仕事」とは「社長の代行業」と言えます。社長の仕事を代行する代わりに給与をもらっているということです。
こう考えると社長の仕事とは、「働く人の環境を整えること」だと分かります。会社が大きく、そして従業員や組織の習熟度や自律性が高まるにつれて社長の仕事はどんどん抽象的になりますし、中小規模で従業員や組織が未熟であれば社長の仕事はどんどん具体的に、現場的になっていきます。
その中で今回は一般的な中小企業社長の仕事内容を解説していこうと思います。規模としては従業員数~300名、売上規模~100億程度あたりを想定しています。
▼働く人の環境を整えるために必要な最低限の状況
社長の仕事を10個解説する前に、働く人の環境を整えるための3つの要諦を説明します。
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利益の出るビジネスモデルの構築
設備/IT投資、就労条件の向上、資金調達。
物理的、物質的な環境整備を行うためにはキャッシュが必要です。キャッシュを得るには利益を出すこと。利益が出るビジネスモデルでなければ、資金調達もできません。
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報連相/指揮命令の経路設計
日報でも定例会でも良いので、現場状況や外部環境の変化を収集できる報連相が定期的に行われる状況を創りましょう。この時、「どんな情報が必要か」も合わせて設計することが重要です。
同時に社長や管理職からの指揮命令を現場へ落とし込む経路設計も必須。意思決定を正しく実行できなければ、報連相が無駄になります。
私が実際に行っている報連相の仕組みは下の記事にもまとめていますので、ご覧ください。
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社長とマネージャー層間の合意形成
マネージャーが社長の考えや視座を理解していないと、報連相や指揮命令の情報がノイズだらけになります。特にマネージャーが情報に「我欲」を入れ始めると、社内はぐちゃぐちゃになっていきます。
報連相/指揮命令を適切に機能させるには、社長とマネージャー間で合意形成をし、信頼関係を構築している必要があります。
この3つの実現に繋がる業務が、今回のブログでご紹介する10個の社長の仕事です。
ではようやく解説に移りましょう。
▼解説
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仕事を取ってくる
大型の仕事を取ってくるのは社長の仕事であるケースが多いです。カウンターパートを合わせ、組織ぐるみで営業をかけることで、大きく持続性のある仕事を獲得します。
また、新規の仕事の種を見つけるのも重要です。単一事業しかしていない会社であればなおさら新規事業軸を社長起点に見つけていくことが多いのではないでしょうか。
余談ですが、JCやロータリークラブといった会合に社長が参加するのも、地域の仲間同士で仕事を回したり、行政から仕事をもらうためです。決して遊びに行っているわけではありません。
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業務を作る
組織の大小、仕事の付加価値に合わせて意味のある業務を作るのも社長の仕事です。
例えば組織が大きくなり、付加価値や生産性が高まってきたら業務を細分化し専門性を高めます。新規事業等を成長させるのであれば、その事業を構想レベルから業務レベルに落とし込み、兼務や新規採用で仕事を割り振っていく必要があります。
かなり自律もしくは成熟した組織でないと、現場だけで業務を作って分担していくのはなかなか難しいと思います。
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資金を調達する
銀行を通じて借入を行うのは社長の仕事です。要するに責任を取る仕事です。
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KPIを管理する
財務を見て、事業の肝となる数値を適切に管理します。これまでの経験や知識を基にどの数値が業績悪化のサインか見極め、事前に手を打ちます。
やけに社長がこれに関して口うるさい、みたいな事柄がある場合はそれがKPIになっている可能性が高いです。逆に社長は、口うるさく何度も現場にKPIについて問いただし、嫌でも意識せざるを得ない状況を作りましょう。
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人を採用、配置する
誰と仕事をするかを決めるのも仕事です。重要な役職や肝となる業務に関しては、社長自身が最終面接の担当をしている人が多いです。
また仮に、適性が合っていなかったり会社にいると困る人材についての望まれない異動・解雇の判断と指示は、社長が行っている会社が多いように感じます。
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人を育てる
特に後継者、マネージャー、番頭の育成は社長自身が行っています。自宅に呼んだり、個別に非公式な打ち合わせをするなどして社長自身の理念やポリシーを共有したりしています。余談ですが、後継者や番頭には新卒者から選ぶ社長が多い印象です。
育成としては「修羅場に叩き落とす」手法をよく聞きます。例えば赤字が続いている事業のトップに配置したり、突然昇進させてチームを引っ張ってみさせたりです。
非情に思えますが、修羅場を経験することは非常に大切です。
- どうやったら信頼されるか
- どんな時に裏切られるか
- しんどい時にどうメンタルケアするか
- 利益がどれだけ大切か、難しいか
みたいなことがOJT形式で学習できます。
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報連相を受ける
知りたい情報を定期的に受け取るための仕組み作りに苦労している社長も多いと聞きます。例えば、
- 市場がどうなっているか
- 新規事業の種は無いか
- 現場で何か問題が起きそうか
- 指示が適切に届いているか
等です。現に報連相がしっかりできず裸の王様になった社長仲間を何人も見てきました。やはり何もしなければ、悪い情報や面倒くさい情報は社長の基には届きにくいものです。
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指揮命令系統を作る
現場は、現場のことをよく知り、かつ現場の従業員とコミュニケーションを取りやすい直属の上司が指示出しをしたほうが平時は上手くまわります。
私は昔、私自身が直接現場の従業員に指示を出し続けて失敗したことがあります。それは私と上司の指示が食い違っているため、上司の求心力がなくなり現場の統制が効かなくなったためです。
やはり現場の複雑さを理解しているのは現場の従業員とその上司。社長の思惑が現場の状況とかけ離れている時、仮に指揮命令系統が整っていれば直属の上司が現場の実態と社長の思惑を調整してくれます。
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現場を見る
定期的に現場を見て回っている社長は非常に多いです。おはよう、とかありがとう、とか声がけするだけでも大丈夫です。
社長が現場に来ると、現場には緊張感が生まれます。緊張感は怪我を予防したり生産性を高める効果があります。同時に「見てくれている」という感覚が醸成され、信頼関係の構築にも繋がります。
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現場業務を理解する
意外と皆さん忘れがちなのが現場業務の全体像を把握することです。
確かに創業したり事業を立ち上げたりしたときは、自分で業務を作っているためどんな仕事があるか分かります。
しかし長い年月をかけて独自に現場で改善された業務や仕組みが増えてくると、全体像を把握している人が誰もいないなんて状況が生まれてきます。そして気付いたら残業が増え、新しいことをやろうにも見たこともない業務によって皆手一杯で、人件費も何故か増えてる、みたいな話ありませんか?
定期的に現場の業務を棚卸し、全体像を理解することは重要な社長の仕事です。何の業務をしてもらうのにお金を払っているのか、今一度整理してみてはどうでしょうか。
▼さいごに
いかがでしたでしょうか。実際に私や私の知人の経験をまとめてみました。十分な伴走期間を経ずに事業を承継し悩んでいる方の指針になれると幸いです。
これからの日本の環境は、我々中小企業にとっては非常に厳しいものになると思います。いかに生き残るか、その運命は経営者の手腕にかかっていると思います。お互い頑張りましょう。