小心者のぼくの日記

小心者のぼくが、経営・起業・資産運用であれこれしているブログ。

経営戦略論、フレームワークに疑問を持った時に読む本

こんにちは。”小心者のぼく”です。

戦略論やフレームワークMBAなどで体系的に学ぶと、「いやいや、ほんとに?!」と感じることがあると思います。

かくいう私も、何故全てのケーススタディで同じフレームワークを使わないのか疑問に思っていました。同じ分析フェーズなのに、この場合は5Fを使うしこの場合はSWOT、今回は3C...。

もっというと、ローカルビジネスやサービス業、IT企業のように勝ち方の種類が膨大にある場合は「戦略としての理論的な正しさ」の重要性が薄まり「差別化の切り口を見つける」「技術的に優れている」という個別具体的な要素の重要性が高まるんじゃないかと感じるようになりました。

そんなモヤモヤしていた時に出会ったのが今回ご紹介する書籍です。そしてこのモヤモヤが、ある意味一気に吹っ飛びました。

戦略論を学んでモヤモヤしている方、是非読んでみてください。

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戦略サファリ

【書籍名】

戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック

【著者】

ヘンリー ミンツバーグ

ブルース アルストランド

ジョセフ ランペル

▼この本の問い

「つまるところ、適切な戦略アプローチは何か」

▼この本の主張

結論から述べると、「適切な戦略アプローチを完全に理論で説明することはできないので、その状況に応じて組織を変革しましょう」ということ。

(この結論にはさすがに笑いましたが、モヤモヤが一気に吹っ飛びました。

自分の頭で考えて実行した戦略、アクションに自信を持つしかないということです!!!)

 

戦略が生まれた時代背景によって支持される戦略論が変わり、大きく分けると戦略マネジメントは10の流派(スクール)に分類されます。その中でも更に、「策定(意図的)と形成(創発的)」「ポジショニングとリソースベース」という切り口のスクールに分けられます。

また経営の本質は、「アート」「クラフト」「サイエンス」の組み合わせであり、ここをどのようにバランスさせるかは決まっていません。

そして実際には適切な戦略は一義的に決まるものではなく、様々な要素をマクロで、ミクロで多面的に捉えなくてはなりません。さらに悪いコトに、10の流派を理解したとしても下記の様な問いには答えることはできないとしています。

  • 戦略とはどの程度複雑で、どの程度シンプルである必要があるのか
  • 各スクールはどのタイミングでどの程度統合するべきか
  • 戦略はどの程度ユニークでどの程度包括的な基本セットがあるのか
  • 戦略形成はどの程度意図的で、どの程度創発的であるべきか
  • 戦略家とは個人なのか組織なのか
  • 変化と安定をどの程度調和させるか
  • 戦略的な選択とはどの程度存在するのか
  • 思考と行動をどう組み合わせるのが一番適切か

▼解説

では実際に10の流派を簡単にご紹介します。 

  1. デザイン・スクール

SWOT分析を基本モデルとし、企業内の能力を外的要因とフィットさせる戦略形成プロセスである。市場が安定しているフェーズや、初期の仮説段階では有効であるものの、強みや弱みは机上では分からないことが欠点である。また組織の視点がないため、組織は戦略に従うという実務上ではなかなか腹落ちしない前提に立っている。

  1. ラニング・スクール

デザイン・スクールと同様、SWOT分析を基本としているものの、経営陣ではなく経営企画が戦略形成の主体であると視点が違いである。このスクールは、戦略策定プロセスは機械的に形式化されているという見方をする。しかし現実には、戦略計画からは革新的な戦略を作成することはできず、また戦略的な多様な選択肢も生まれない。あくまで作成された戦略の分析に活用できる程度である。

  1. ポジショニング・スクール

デザイン及びプラニング・スクールを基本モデルとし、経済市場のポジショニングの確立による競争優位性の構築に注目したスクールである。産業ごとに成功する戦略の型があり、それに応じた組織が存在するという前提がある。市場シェアと経営コストに焦点を当て過ぎている点や、統計的調査によると業界による違いよりも業界内における戦略の違いが収益性の差に寄与しているという結果が出ている点が大きな欠点として挙げられる。また業界から戦略策定プロセスが始まるため、確立した業界でしかアプローチできないという制約も存在する。

  1. アントレプレナー・スクール

形式化ではなく、起業家精神、起業家の人格から戦略が形成されるという見方である。ビジョナリーカンパニーの領域であり、戦略はリーダーの頭の中にある。策定や戦略形成のプロセスは経験や直感によって成立し、創発的なアプローチを取る。しかしこの流派の欠点は、起業家の頭の中を科学できたわけではないため、彼らが死んだ時点で終わりという結論になってしまう点である。

  1. コグニティブ・スクール

アントレプレナー・スクールから引き継ぎ、起業家の心の中(認知)を分析することによって戦略形成のプロセスを解明しようとしたスクールである。経営の分野に心理学や認知科学を取り入れ、経験やカンといったこれまでカバーできなかった領域に注目し始めた。「どう情報を処理し世界に対する認知をアップデートするか」という客観的認知と、「どう環境を解釈し、世界を創造するか」という主観的認知が存在する。

  1. ラーニング・スクール

明確にコントロールされた計画的な戦略形成プロセスではなく、創発的に現れた戦略をいかに組織へパターンとして浸透させるかを解明しようとしたスクールである。すなわち戦略をどのよう策定しているのかではなく、創発的に生まれた戦略を形成させるための組織としての学習プロセス(SECIモデル)に注目する。学習する内容は、市場の変化に適合する、もしくは市場を作り出すために最適な資源の組み合わせ・活用プロセスは何かということである。ただし、学習するときと学んだことを活かすときをきちんと使い分けないとグズグズになる可能性がある。

  1. パワー・スクール

戦略形成・策定はシステマチックな分析からでなく、社内外との交渉や、競合の動きに対する策略(プロイ)から生まれる、とするスクールである。その中でもミクロなパワーとは、組織の内部における政治的な動きで、夢や希望、嫉妬心、利害や恐れを持つ個人の欲をマネジメントするものである。一方でマクロなパワーとは、政府や競合、チャネルに対して関係者の要求をマネジメント、組織にとって有益な関係者を厳選し活用するものである。このスクールは対立を基本とするため、多大な損害や歪みを生じさせてしまうだけでなく、リーダーシップやカルチャーを軽視する傾向にあることが課題である。

  1. カルチャー・スクール

パワー・スクールが自己利益に焦点を当てていたのに対し、カルチャーは組織共通の利益に焦点を当てたスクールである。世界に対する解釈と行動が緊密になる過程で信念が生まれ戦略が形成される。その信念(カルチャー)が組織の意思決定スタイルや分析の活用といったパターンに影響を与え、資源や能力を守ったり、競争優位を構築したりする。しかしカルチャーは戦略を固定化させる可能性が高いため、戦略変更にはカルチャーの根本的な変革(7S)を実施しなければならない。

  1. エンバイロメント・スクール

「環境」が戦略形成上の主語で、当事者であるというスクールである。条件適合理論がもととなるこのスクールは、組織規模、技術、状況の安定性、競争環境等の「何か次第」の制約で戦略が一義的に決定するということだ。すなわち環境が戦略を規定し、組織はあくまでも環境に従属する受動的なものとなる。またリーダーシップとは、環境を把握し、組織が適応していることを保証するものに過ぎない。そして、この特有の環境の側面と組織に特有な特徴との関係を説明するのが、このスクールの始まりだ。ただし、この環境に制約される度合いは組織のカルチャー次第でもある。

  1. コンフィギュレーション・スクール

「変革をどうマネッジすべきか?」という課題に対し、組織が置かれている状況をどう捉え、次への変革のプロセスをいかにコントロールするのかという考え方を示したものと言える。組織の置かれた文脈・状態によって、これまで紹介した各スクールの戦略形成のプロセスやその結果生じる戦略のパターンの考え方が選択される、という包括的なスクールである。

変革プロセスはトップダウン型とボトムアップ型に分けられる。それぞれ統括的マネージャが行う「企業を変革するコッターの8ステップ」と、事業ユニットレベルのマネージャが行う「ビアの効果的な変革の6ステップ」だ。トップダウン型の変革はまず経営陣が先導を切り、その後人々のハートをつかみつつ権限移譲していく変革のスタイルを取り、ボトムアップ型は現場の日々の学習や対話を通じて起きる変革を他部門へも展開していく変革のスタイルを取る。

▼さいごに

いかがでしたでしょうか。

私はこの書籍を読んでMBAで感じていたモヤモヤが解消されました。そして学んできたことがどんどん繋がっていく感覚が非常に心地よく感じました。

経営を勉強したことがある方は、是非一度読んでみてはいかがでしょうか。

 

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